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RAINBOW OF MAGIC








イギリスの首都、大都市ロンドンより北にホグワーツ。
ここもすっかり様子を変え、山々がその色を暗くし、湖がリンクのようになり、大地が凍りつく季節がやって来た。
ついにクィディッチの季節がやってきたのだ。
身を切るような空気の中を高速で飛び回る、魔法使いの中で最もポピュラーな球技・・・・・・それがクィディッチだ。
ここの魔法使いの卵達は、極寒の中でもこの競技に夢中になる。
1年に1度の寮別の大会になると、その盛り上がりは相当のものになるのだ。





RAINBOW OF MAGIC





「・・・・・・あ~。のど乾いた。」
赤毛の少年がベッドからムクッと起きあがる。
まだ日が昇らず、辺りは漆黒の暗闇が包み込んだかのように暗かった。
少年は水を求めて、ベッドを下りた。
彼はロン=ウィズリ-、何を隠そう去年からグリフィンドールの選抜チームのキーパーを務めているのだ。
主力の3人が禁止処分になった中で優勝の立役者の1人だ。
去年の最終戦で神懸り的な連続セーブでチームを救ったのは、今でも印象深い。
起きたばかりの目は暗闇に対応できず、目が暗順応を起こしてから辺りが少しずつ見え始めた。
そんな彼も寝起きはどうやら頭が働かないらしく、ぼーっと辺りを見まわした。
だんだん暗闇の中でも辺りを識別出来るようになり、室内にいる皆が寝静まった中、自分の近くに不自然な人影がある事で彼の頭は完全に覚醒した。
「やあ。何してるの?」
人影に声をかけた。
「雨見てる。朝までには止んで欲しいな。」
窓際に座った少年は外を見たまま答えた。
「明日はグリフィンドールの英雄ハリー・ポッター復活だね。・・・・もしかして心配なの?」
窓際のいるハリー・ポッターと呼ばれた少年は首を横に振った。
彼は異例の特別措置により、1年当時から代表選手だった。
これは100年ぶりの快挙らしい。
エースシーカーとしてグリフィンドールの2年連続の優勝に貢献し、出場試合の全てスニッチをキャッチしてきた・・・・忌まわしき化け物に襲われ箒から落下したたった1度を除いては。
だが去年の初戦の試合直後にいざこざを起こし、永遠禁止処分を受けていた。
それがようやく解けたのだ。
「試合出来るのが嬉しくて仕方ないよ。・・・・・・またクィディッチが出来るんだ。」
ハリーはそう呟くと、瞳にうっすらと輝くものを浮かべていた。
ロンは少し表情を緩めた。
「今年こそは一緒に優勝しようよ。・・・・・・よし!!そのためにはもう少し睡眠とろうぜ。」
「うん。」
2人はそのままベッドに戻ると、どちらが先ともなくまた元の闇夜に溶け込んでいった。







クィディッチに出る選手は既に更衣室に集まっていた。
ハリーは朝起きてすぐにここに来たかのような錯覚に陥っていた。
朝の事がほとんど思い出せないのだ。
なんとか思い出せるのはロンが朝起こしてくれた事、大広間に入った時の同寮の仲間からの大音量のハリーコールだけだった。
その事でハリーはどれほど舞い上がっていたかに気付いた。
「キャプテンから一言あってもいいんじゃないの?」
ロンが少しからかい気味にしゃべりかけた。
「あっそうか。僕がキャプテンだった。」
「おいおい、大丈夫かい?」
驚いた顔をしているハリーを見て、ロンは少し呆れ顔になる。
「え~と。・・・・みんな!!試合の前に少ししゃべっていいかな?」
ハリーの遠慮がちな言葉に、各自で少しでもリラックスしようとしていた選手が集まる。
その顔には不安の色が強かった。
ハリーは集まった視線に少したじろいだが、どんなに頑張っても自分にはウッドやアンジェリーナのような演説は出来ないだろうなと思うと、不思議と口元に笑みがもれた。
「え~と・・・・今年もまたマクゴナガル先生の所に優勝カップ置けるようにみんなで頑張ろう。」
ハリーの言葉に反動のように賛成の声が跳ね返ってきた。
そして1人、また1人と更衣室を後にした。
ハリーとロンが出て行こうとした時、少し高い声に呼びとめられた。
「ハリー。ちょっといいかしら?」
「ハーマイオニー。」
その少女を見てハリーは驚いた。
ロンはその様子をクスッと笑って、少しおどけた声でハリーをからかってからその場を後にした。
「もう時間がないわ。マクゴナガル先生から伝言を頼まれて来たの。“結果を気にせずに、自分の精一杯のプレーをしなさい”って。」
ハリーは伝言を聞くと、にっこりと笑った。
ハーマイオニーは久々に見たハリーの笑顔に照れて、つい憎まれ口を叩いてしまった。
「なんだか嬉しそうね。そうね、そういえば初戦の相手はレイブンクローだったわね。あそこには美人シーカーいるものね。」
「ううん。嬉しいんだ。ここにまた戻れてきた事が・・・・・もう戻れないと思ってた
からね。それに・・・・」
その言葉にハーマイオニーは胸が締め付けられたかのような苦しさを感じた。
そしてなんて馬鹿なことを言ったのだろうと自己嫌悪した。
ハリーは少し口篭もり、触ってみてっと言わんばかりに手をつきだした。
その手に触れると微かに震えているのが分かった。
少女はスネイプが微笑み、優しく励ましているのを見たぐらい打ちのめされたように驚いた。
少年ははにかんだように笑い、俯いた。
「嬉しいと同じくらい怖いんだよ。」
優しい感覚と女性独特の甘い香りに包まれたのを感じて目を上げた。
そこで自分が少女の腕の中にいる事を知った。
何か言おうと思ったが、ハリーは声が出なかった。
右頬に柔らかな感触を触れたと思うと、すぐにふっと外気があたるのを感じた。
ハリーから離れたハーマイオニーは真っ赤な顔をして俯いていた。
「元気の出るおまじないよ。もう試合始まるから行った方がいいわよ。」
そう言われると恥ずかしそうに更衣室を後にした。




ハーマイオニーが同寮で同期のラベンダーやパチルのもとに着いたのは、センターサークルでフーチ先生が開始の合図を出した直後だった。
笛の音が鳴ると同じに14本の箒が宙を舞った。
グリフィンドールの選手は、特にチェイサー陣は去年とは全く違っていた。
ほとんどの選手が未経験で、まるで石が宙に浮いているかのように固かった。
その隙をレイブンクローが見逃すはずもなく、怒涛の如く攻め込んできた。
だがレイブンクローのチェイサーが放ったオープニングシュートをロンが長い手で払い落としたのだ。
その瞬間、赤と金色で埋め尽くされたスタンドの一角が爆発したかのように盛り上がった。


ウィ-ズリーは我が王者
ウィ-ズリーは我が王者
クアッフルをば止めたんだ
ウィ-ズリーは我が王者

ウィ-ズリーは守れるぞ
万に一つも逃さぬぞ
だから歌うぞ、グリフィンドール
ウィ-ズリーは我が王者

ウィ-ズリーは我が王者
ウィ-ズリーは我が王者
クアッフルをば止めたんだ
ウィ-ズリーは我が王者


優勝した時に活躍したキーパーを褒め称えた歌が合唱された。
その後も一方的に攻められ、ジニーが1本決める間にロンは6回もセーブしたが、2本のペナルティを含む4本決められた。
ハリーは内心焦っていた
去年までのチェイサーは1人も残っていない。
ビッターの2人もジョージとフレッドが禁止処分を受けてからの選んだ選手だし、ジニーでさえ元は急造のシーカーだった。
3年前の優勝メンバーはハリーを除いて誰一人残っていなかった。
ハリーの心の中には致命的な点差になる前にただ早くスニッチを捕まえることしか頭になかった。
スニッチを探す間にお互いに2本ずつ取り合った。
ゴールが決まった瞬間ハリーに並走していたチャンが反転し、一気に自陣ゴールに向かい発進した。
1テンポ遅れてハリーがくらいつく。
ハリ-にも金色に輝く羽の生えたボールが見えたのだ。
ファイアボルトが凄まじい風きり音をたてながら加速する。
まさに炎の雷のごとく。
スピードを上げれば上げるほど空気抵抗が強くなる。
その空気抵抗が頭から血液を奪い去り、思考を消していく。
ぎりぎりの状態の中でハリーの心は躍り、血が滾る。
スニッチが急降下を始めると、それを追ってハリーはさらにスピードを上げた。
常人には・・・・いや並走していたチャンにすら狂気の沙汰としか思えなかった。
チャンが高度を下げるのをやめた瞬間、ハリーの顔が目に入った、その顔にはうっすらとした笑みが浮かんでいた・・・・それはまさにスピードに魅せられた者の顔だった。
地面すれすれでのブレーキング、慣性の法則無視したファイアボルトの抑制力に箒ごと叩きつけられるのはまぬがれたが、ハリー自身の肉体がその力に打ち勝てるはずもなく箒から投げ飛ばされた。
箒から落ちた音はスタンドからの大音量の絶叫にかき消された。
だがその絶叫はハリーの耳には届いていなかった、ハリーは薄れゆく意識の中で力の入らない左手でスニッチを握り締めた。
地に仰向けに倒れたハリーは青ざめたマクゴナガルとマダム・フーチによってマダム・ポンフリーの元に運ばれた。
選抜メンバーやハーマイオニーを始めとする大勢の生徒が様子を見に行こうとしたが、数人の先生以外は中には入れてもらえなった。



数日経ってもハリーは目を覚まさなかった。
マクゴナガルの許可によってハーマイオニーだけが病室に入ることを許された。
ハリーの容態が知りたいとのあまりにも多くの嘆願書がグリフィンドールの生徒から集まり、マクゴナガルもポンフリーも首を横に振ることができなかった。
それにハーマイオニーが選ばれたのだ。
彼女は昼夜を問わずに、授業と容態を知らせに談話室に戻る以外ほとんどの時間を病室で過ごした。
そしてついに最終戦のグリフィンドール対スリザリンの試合が始まる時間になっても、目を覚まさなかった。
ハリーの手を握り締めて話しかけた。
「もう試合始まっちゃったわね。なんであんな無茶なことするのよ。あなたなしで優勝なんてできるわけないじゃない。・・・・・いつもそうよ、あなたはみんなの心配を無視して、どうしてそんな危ないことができるの?どうして・・・・・」
ハーマイオニーの目から涙が溢れ、頬を伝ってハリーの手に滴った。
「・・・・・・何で・・・泣いてるの?」
ハーマイオニーは目を見開いた。
「ハリー?目が・・・・覚めたの?」
ハリーはうっすら目を開けて、微笑んだ。
「・・・・・ハリー・・・・試合・・・。」
とめどなく溢れでる涙に言葉が詰まった。
だがハリーはそれだけで理解した。
「今、試合中なの?」
ハーマイオニーは首を縦に振った。
本当は止めたかったのに、止めることができなかった。
ハーマイオニーにはハリーがどれほどクィデッチを愛しているかを知っているからだ。
だからロンに教えてもらいながら手入れしたファイアボルトも綺麗に選択した紅いローブも持ってきていた。
ハリーは一言お礼を言うと、すぐにローブに着替えて、箒に跨った。
「乗って。ハーマイオニー、早く。」
「・・・・・いやよ。・・・・行かないで。」
ハーマイオニーはハリーのローブを後ろから掴んでいた。
「え?」
「あなたは怪我してるのよ。止めるのが当然じゃない。」
ハーマイオニーはほとんど叫ぶように言った。
「・・・・そんな痛そうな顔しないで、そんな苦しそうな目をしないで。僕は君の笑ってる顔が好きなんだから。」
ハーマイオニーの顔がポッとハリーのローブよりも赤くなった。
「今、そんなこと言うなんてずるいわ。卑怯よ。」
言葉はきついが、口調はとても柔らかく甘い。
「ごめん。」
「ハリーが私のこと愛してるなら、絶対に無茶しないで。」
ハリーは答えられなかった。
一度クィディッチに夢中になってしまえば、当然無茶なプレーもしてしまうからだ。
ハリーの困った表情を見て、ハーマイオニーはクスッと笑った。
「じゃあ私の為に勝ってきて。」
ハリーの目がパッと明るくなるのがはっきりわかるのが面白くて、彼女はまた笑った。
「OK!Beby!!」
人差し指と親指を立てて、ウインクをした。



ハリーがハーマイオニーを乗せて競技場に着いた時、選手たちが中央に集まっているのがはっきりわかった。
彼の顔から一気に血の気が引いた。
「ハーマイオニーこの辺で降ろすよ。」
「ええ。」
ハリーは南側のグリフィンドールのスタンド人の少ない辺りに彼女を降ろすと、中央の人だかりの中に行くために箒を浮き上がらせた。
そこに近寄るにつれて様子がわかってきた。
どうやら誰かが負傷したのだろう。
そして試合が中断されるのだから、おそらくシーカー。
マルフォイならザマミロだがもしこちらの選手ならと、今度は別の心配が沸き起こった。
マダム・ポンフリーに治療を受けているのは紅いローブだった。
「ジニー!!!」
ハリーは思わず大きな声を出してしまった。
競技場全体の目が一気に自分に向くのが、ハリーには良くわかった。
「ハリー。大丈夫なの?」
ロンが目を丸くしながら心配そうに聞いた。
「もう平気さ。それよりも僕を試合に出してくれ。」
ロンの返事も待たずに、ハリーは倒れているジニーの横に腰を下ろした。
「もう大丈夫だよ。あとは僕がやるよ。よく頑張ったね。」
ジニーの頭を撫でながら優しい言葉をかけた。
すぐにジニーは運び出されて、ハリーの交代が認められた。
ハリーの登場で競技場全体のテンションが最高潮に達した。
鼓膜が破れんばかりの凄まじいハリーコールがスタンドから起こった。
その大音量で競技場が壊れるのではと思われるほどの盛り上がりだ。
「ゴイルのやつジニーにブッラジャー当てたんだ。絶対に許せない。」
ロンが怒りに震えながらハリーに訴えた。
「この試合すぐに終わらすよ。5分以内に僕がスニッチを掴んで終わりさ。」
ハリーの瞳にも青白い炎が浮かび上がっていた。
全てがハリーの宣言通りだった。
グルグルと2、3周回ったかと思うと、あっという間にスニッチを掴んだ。
マルフォイがファイアボルトの先を掴もうとしたが、それすらも許さなかった。
観客もその圧倒的なプレーに総立ちだった。
スタンドからは歓声が、紙吹雪が、花火が、ありとあらゆるものが舞った、そして最後には南側のスタンドから北側のスタンドに向けて魔法の虹が掛かった。
それは何よりも綺麗で全ての人の心を魅了した。
そして、ハリーはチームメイトにもみくちゃにされながらも、南側のスタンドに高々と上げた指をさし続けた。




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作者コメント

今回がハリポタでは処女作なんで誤字脱字、設定ミス、原作内容無視等々ありそうでかなり心配です(^^;
もしあったらこっそり・・・・本当にこっそり優しく注意してくださいね。
自分の中ではかなり長くなってしまったので前半と後半がいまいちちぐはぐな気がするですが・・・・・(ーー;
魔法の虹と勝った後のハリーがお気に入りです。
あのポーズって私の中では2つの意味があったりするんです。
もしかしたらただのカンチになりそうではっきりは書いていませんけどね(^_-)-☆
ここまで読んでくださった人がいましたら恐悦至極でございます。
ありがとうございました。

 2004.9.29 by 風雅