『屋敷しもべ妖精は見た!』








今日も今日とてドビーは忙しい生活を送っていました。
屋敷しもべ妖精として生きてきた今までで、これほど忙しかった日々はありません。

でも、ドビーは幸せでした。
なぜなら、ドビーは自由だったからです。

一生懸命働けば、お給料がもらえる。休みだってある。
そんな屋敷しもべ妖精が何処にいる?
ドビーがいる!

ダンブルドア先生は以前のご主人様に比べて、心優しい素晴らしい人でした。
あの偉大なハリー・ポッターだっています。

ドビーはホグワーツでの日々がとてもとても気に入っていました。








『屋敷しもべ妖精は見た!』












その日も屋敷しもべ妖精であるドビーは仲間達と共に、真夜中のホグワーツで掃除をしていました。

真夜中にするのは、生徒に自分達の存在を感じさせてはならないからです。
屋敷しもべ妖精として優秀であればある程、生徒にその存在を感じさせないものなのです。

ドビー達はとっても優秀なしもべ妖精です。
少なくとも本人達はそのつもりです。

であるからには、真夜中に掃除をするしかありません。

と言う訳で、週に一度、ドビー達は教室の大掃除をするのが決まりでした。








教室の机も椅子もピッカピッカにします。
某根暗教師にも文句は言わせません。


ドビーは教室から教室へと回りました。

次から次へと綺麗にしていき、ある教室へ辿り着いた時でした。




ドタッバタッ!!


突然、不審な物音がしたかと思うと、


「んん……、駄…目………よ、ハ………ああ……」



……。

何やら、声が聞こえて来るではありませんか。


駄目なのです。生徒は、夜は寮から出ては行けないのです。
出ている子は悪い子なのです。




ドビーめは、悪い子を見つけました!悪い子を見つけました!




ドビーは早速注意しなくては、と思いました。


ここで、普通の屋敷しもべ妖精ならば黙って、逃げてしまうでしょう。
その存在を知られないように。

でも、ドビーは違います。ドビーはとっても優秀です。
ちゃんと注意するのです。

だてにお給料をもらってないのです。



「悪い子みっけ、でいらっしゃいます!!」


そう叫んで、ドビーは教室の扉を開けました。






!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



え?

そんな……。

そんなはずはないのです!!!



ドビーは目がおかしくなったのかと思い、ごしごしと手で擦ってからもう一度見ました。
でも、目に映るものは変わりません。




制服の乱れたハーマイオニー・グレンジャーとその上に乗っている男の子は……。


ハリー・ポッター?

あの偉大な魔法使い、ハリー・ジェームズ・ポッター?





「……」

「……」

「……」


三人が三人とも口をぽっかりと開けて喋れません。

ほとんど半裸の二人と、ハイセンスすぎる奇妙な服装のしもべ妖精は互いに見つめ合い、固まっていました。



……でも、最初に我に返ったのは、ドビーでした。さすがに優秀です。

ドビーは考えました。


お二人は何をなさっているのだろう?
お二人が悪い子なはずがない。


だって、これじゃ、まるで……、ハリー・ポッターが襲っているみたいではないか。

……。





「ドビーは悪い子!悪い子!悪い子!悪い子おおおおお!!!!」





ドビーはいきなり自分で自分の頭を殴りはじめました。
ガツンガツンと殴りはじめました。


「ドビーめは、ああ、ドビーめはハリー・ポッターが襲っているかもしれないと疑った!!ハリ?・ポッターは気高い!!
勇猛果敢!!
偉大な魔法使いでいらっしゃいます!!
そんなはずない!!そんなはずない!!そんなはずないいいいいい!!!!」

「そうだよ、僕がそんな事するわけないだろう(悪)」

「ねえ、ちょっと、だいじょうぶなの、この子?」


突然、キーキー声で叫びはじめたドビーを何とかしようと、あられもない格好の二人がドビーに声を掛けます。


実はドビーの予想した通りの事をしようとしていた二人です。

悪い子達ですね。
いけないですね。
よい子は真似しちゃいけませんね。



……でも、ドビーは信じません。



「ほら、お二人はお優しい!!ドビーにだいじょうぶかって聞いた!!
それなのに!!それなのにドビーは悪い子!!
疑ったりした、悪い子!!
お仕置きが必要でいらっしゃいます!!オーブンに頭を突っ込むのです!!
熱くても突っ込むのです!!頭を冷やすのです!!」

「そのままついでに今見たモノを忘れてね(ニッコリ)」


ハリーが突っ込みますが、ドビーはもうすでに聞いちゃいません。

教室の壁という壁にドコンドコン頭突きをした後、叫びました。




「ドビーは悪い子おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」




そのまま、走り去るドビー。


何かをしようとしていたお二人さん。

独りは邪悪な微笑みをたたえたまま、もう一人は呆然とした顔で、それを見送ったのでした。









……その後。


「ハリー!貴方、ちゃんと忍びの地図を見ていなかったでしょ?アレが先生だったらどうするのよ!!今回はドビーで助かったけど!!(怒)」

「ごめん、君に見とれていて……(しれっ)」

「じゃ、じゃあ、しょうがないわね……(照)」


反省の色がないお二人。



……お前らいい加減にしろよ、と。

チャンチャン。


(おわり)













作者コメント

ジャンル不明の超短篇。別名、こんなハリーは嫌だ。真夜中の教室で二人が何をやっ ているのかは謎に包まれていますが、何してたのでしょうか(笑)。魔法の練習か な?運がいいのか悪いのか、ドビー君はそんな彼らの姿を目撃したわけです。話の内 容はそんだけ。私の二次小説にしては珍しく、人畜無害な一品です。たぶん。
 by レイン坊